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最高裁判所第二小法廷 昭和45年(オ)788号 判決 1971年11月26日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人中村達の上告理由一の(一)、(二)について。

本件各土地は、おそくとも長崎県松浦郡日島村(のちに若松町と変更)間伏郷のため所有権保存登記が経由された昭和三年四月一七日頃から現在にいたるまで、右日島村間伏郷の所有に属している旨および被上告人は、一三、四才の頃から訴外父山口初蔵に連れられて本件各土地に赴き、杉の植付け、手入れを行ない、また、昭和三年頃、右各土地に被上告人みずから杉および桧を植え付け、従前どおり手入れを続けた旨の原審の認定判断は、原判決(その引用する第一審判決を含む。)の挙示する証拠に照らし、首肯しえないものではない。所論のうち、右認定に反する事実を主張する部分は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するに帰するものであり、その余の部分は、被上告人の地上権の時効取得を肯認した原審の判断に関係がない事柄を主張するに過ぎないものであるから、論旨は、いずれも採用することができない。

同一の(三)、(四)について。

およそ地上権の時効取得が成立するためには、土地の継続的な使用という外形的事実が存在するほかに、その使用が地上権行使の意思に基づくものであることが客観的に表現されていることを要すると解するのを相当とする(最高裁判所昭和四五年(オ)第六〇号、同年五月二八日第一小法廷判決、裁判集九九号二三三頁参照)ところ、原判決が引用する第一審判決の理由の二に認定された各事実および原審認定の、被上告人家では被上告人の玄祖父山口茂エ門が、日島村間伏郷滝ヶ原および同郷石司部落民の税金を代納した代償として、当時右両部落民が使用収益権を有していた本件各土地を杉等の立木を所有する目的をもつて専用することを、右両部落民から許された旨代々言い伝えられてきた事実によれば、被上告人は、昭和三年頃から昭和二三年末頃までの間、本件各土地を杉等の立木を所有する目的で継続的に使用してきたものであり、かつ、その使用が右立木所有のための地上権を行使する意思に基づくものであることが客観的に表現されていたものと解するのが相当である。それゆえ、所論地上権の時効取得の成立を認めた原審の判断は、正当として是認することができる。

そして、所論は、もと本件各土地は、間伏部落住民が所有者間伏郷から共同使用を許され、間伏部落住民が共同して占有してきたものであるから、特段の事情がないかぎり、被上告人が右各土地を排他的に占有するものであるとはいえず、また、右権原の性質上、被上告人が地上権行使の意思に基づいて占有するものであるともいえない旨主張するが、前述のように、被上告人が昭和三年頃から本件各土地を排他的に占有してきたことは、原判決が適法に認定判示するところであり、右主張はその前提において原審の認定と異なるものがあるから、論旨は、採用するに由ないといわなければならない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 村上朝一 裁判官 色川幸太郎 裁判官 岡原昌男 裁判官 小川信雄)

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